【巻き込み力の思想①】なぜ「巻き込み」にはダイナミズムが必要なのか?

今回のインタビューでは、「巻き込み」という行為の背景にあるダイナミズムという概念について、AWコンサルティング代表の渡邉氏に問いかけました。

ここで語られるのは、「こうすれば正解」という手法ではなく、渡邉氏が日々の現場で捉えている組織の見方そのものです。

読み終わったときに、答えが手に入るのではなく、組織を見る新しい視点が残る。

そんな体験を目指しています。

話し手

渡邉 篤史(わたなべ・あつし)
株式会社AWコンサルティング代表。『巻き込み力のマネジメント』著者。数々の有名企業の組織開発コンサルタントとして20年以上の実績を持つ。

間杉 俊彦(ますぎ・としひこ/聞き手)
編集者・ライター。元「週刊ダイヤモンド」副編集長、人材開発編集部副部長。同書の構成・編集を担当。


目次

組織における「ダイナミズム」とは

「ダイナミズム」とは、単なる勢いや活気のことではありません。

人と人、組織と組織の関係の中から、新しい価値が生まれてくる営みを指しています。

では、それはどのようにして生まれるのでしょうか。

シナジーを生み出すためには、単なる共同作業や役割分担にとどまらず、「ダイナミズム」の存在が欠かせません。ダイナミズムとは、人や組織に内在する活力や躍動感のことを指します。つまり現場や人々が生き生きとし、チャレンジ精神が湧き上がる状態をつくり出すことがシナジーを生むカギです。今日のビジネスでは「効率」や「役割分担」、「計画」や「分析」、「法令順守」など、リスク回避や無駄の排除に注力しがちですが、これだけでは未来に向けた新しい価値を創出することは困難です。
──渡邉篤史「巻き込み力のマネジメント」P181より

「変化し続けなければ、活力は失われる」

──間杉 本書をまとめながら、「ダイナミズム」という言葉に渡邉さんの想いが込められているように感じましたが、いかがですか?

渡邉

ダイナミズムという言葉は、岐阜県を中心にスーパーやホームセンターを展開するバローグループの田代正美会長のお話しをお聞きした機会に知って、大いに共感を覚えました。

バローグループでは中期経営計画の中で、異質競争によるダイナミズム創出を掲げて挑戦していらっしゃいます。

経営においてダイナミズムを大事にされているのですが、それは、非連続的な成長のためには人材や組織の活力が不可欠である、ということでしょう。

QUESTION

あなたの組織には、いま「ダイナミズム」がありますか?

「余白のあるコミュニケーション」
── 巻き込みが機能する条件

──間杉 ダイナミズムと「巻き込み力」の関係が気になります。

渡邉

巻き込み力とは、仕事の目的・ゴールを達成するために人々に働きかけて動かす力です。

その場面は「タテ・ヨコ・ソト」の3つとなりますが、動かす対象となる人間に対して向き合う時に特にダイナミズムが重要になると考えています。

人間をモノ扱いしてコントロールしようとすると、ダイナミズムは生まれません。

そうではなく、相手をかけがえのない存在として扱い、向き合って関わることでダイナミズムが生まれてきます。

躍動感のあらわれ方は人それぞれで、中には活力が全面に出てきて見るからに活性化する人もいれば、その一方で表面上はあまり態度が変わらないけれども、心の中でフツフツとヤル気を秘めているタイプの人もいます。

重要なことは内発的なエネルギーに火が付くことです。

大事なポイントは「余白を残したコミュニケーション」ではないでしょうか。

発注・受注の関係だったり、販売代理店との関係だったり、形式的には「上下関係」かもしれません。

そこで「いいからやれ!」と言っても、相手は気分が良くないでしょう。

結果として「いい仕事」にはならないかもしれない。

形式上は発注者と受注者であっても、相手を単なる下請けとして扱えば、相手の知恵や工夫は引き出せません。

そうではなく、「対等なパートナー」として接する姿勢が、相手の力を引き出す。つまり「巻き込み」ができ、そのことがダイナミズムを生み出します。

根底に信頼感があり、配慮する気持ちがあると、仕事で決着をつけなければならないコミュニケーションにも余白が生まれます。

一方的に自分の論理だけで従わせようとしか考えていないコミュニケーションでは、持続的な関係にはなりません。

QUESTION

社外のパートナーに対して、「余白のあるコミュニケーション」ができていますか?

「アビリティとコンピテンス」
── もう一つの能力について

──間杉 「ダイナミズムを持つことで、組織や個人のエネルギーが引き出され、新しい発想や創造力が生まれやすくなります」と書かれていますね。

渡邉

そうですね。そこが日本企業全般に、やや欠けているところだと思います。

ということは、巻き込み力を高める必要がある、ということになるでしょう。

そのことに関して、私が最初に勤めたコンサルティング会社で教えられた「アビリティとコンピテンス」について、少しお話ししたいと思います。

「人間には能力が二つある。一つはアビリティ、もう一つはコンピテンス」ということなんですが、アビリティは他者とは関係なく、自分一人でできる能力を指します。

機械が操作できるとか、計算ができる、作品を作れる、というようなことですね。

これに対してコンピテンスは、他の人たちとの関係の中で発揮できる社会的能力を指します。

人に迷惑をかけない、人に遅れない、負けない。

場の空気が読める、というのもそうです。

私は、今の企業ではアビリティが重視され、コンピテンスの存在に気がついていないのではないか、と思うことがあります。


──間杉 自分の能力を向上させることに熱心である一方、社会的能力に無関心である、ということですか?

渡邉

その通りです。

個人の能力を高めるだけでは、組織は動きません。

人と人との関係の中で力を発揮するコンピテンスがあってはじめて、巻き込みは起こり、組織にダイナミズムが生まれるのではないでしょうか。

QUESTION

あなた自身、アビリティ(個人の能力)とコンピテンス(関係の中の能力)、どちらを磨いてきたでしょうか?

(聞き手 = 間杉俊彦)

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