パワハラにならないよう部下を指導するポイントとは?信頼関係構築の6つのポイント

こんにちは。

AWコンサルティングの渡邉です。

パワハラ問題が世間で取り上げられるようになり、部下への指導の仕方に関する悩みをもった方が増えています。

部下の業務を適切に管理し、ミスをしたときに指導するのは上司として当然の務めです。しかし、上司本人に意図がなくとも、指導の仕方によっては、部下からパワハラだと捉えられてしまう場合があります。

先に断っておくと、私自身は、部下に対して適切なタイミングで厳しく指導するということは、必要なことだと考えています。

厳しい指導が本人にとっては、辛い経験になることもあるでしょう。

しかし、多くの場合、その辛い経験を乗り越えることで、本人の成長が早まり、結果的に仕事の要求に応えられるようになるはずです。

むしろ、上司の役割は、その辛い経験を乗り越えられるように、導きサポートしてあげることにあります。

パワハラ問題は、「どのような指導をすれば、パワハラにあたらないのか?」ということが説明されることがありますが、パワハラと指導の明確な線引が存在するわけではありません。

同じ指導の仕方をしても、一方では愛のある指導に感謝され、一方ではパワハラとみなされることもあります。

この記事では、法的な観点からパワハラと指導の違いを確認しつつ、問題の本質にある部下との信頼関係の作り方について、ポイントを解説していきます。

目次

パワハラとは?どこからがパワハラなのか。

まずは、厚生労働省の資料を引用しながら、一般的に言われるパワハラの定義から確認をしておきます。

パワハラとはパワーハラスメントの略語です。職務における地位や優位性を利用し、業務上必要とされる適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり職場環境を悪化させたりする行為をさします。業務上適正な範囲と判断されれば、パワハラとはみなされませんが、明確に線引きがあるわけではありません。

厚生労働省では、パワハラに該当する行為として、以下の6つを挙げています。

パワハラに該当する可能性のある行為

• 身体的な攻撃(物を投げる、頭を小突くなど)
• 精神的な攻撃(人前で大声で怒鳴りつける、暴言を吐くなど)
• 人間関係からの切り離し(日常的に無視する、会話をしない、部署の食事会に誘わないなど)
• 過大な要求(能力を超えた業務の強要、仕事を妨害するなど)
• 過小な要求(正当な理由がなく、能力よりも著しく低い仕事しか与えない。コピーや書類整理など)
• 個の侵害(プライベートな話題に過度に関わろうとする。個人の考え方の批判や結婚の推奨、有給休暇の取得理由を細かく尋ねるなど)

2020年6月に「改正労働施策総合推進法」が施行されたことにより、パワハラの防止対策が企業に対して義務付けられています。そのこともあり、パワハラを起こさないためにどうすればよいのか?また、訴訟にまで発展したときにパワハラと認められる事例とそうでない事例はどんな違いがあるのか?などをハラスメント研修で社員に啓蒙する企業も増えています。

パワハラと適切な指導の違いとは?

裁判の判例や法律上の問題になったとき、パワハラと適切な指導の最も大きな違いは、その行為の目的に焦点があてられます。パワハラは、上司が自分の利益や立場だけを考え、相手をばかにしたり否定したりすることで、上司自身の目標を達成するものです。これに対して、適切な指導とは、文字通り「教え、導く」ことで部下の成長を促すために、人格を尊重し状況に応じた指導を指します。

一般的な解釈では、下記のような点がパワハラと指導の違いとされます。

パワハラ適切な指導
必要性必要性なし。あったとしても、量や内容が不適切部下の成長促進・職場の生産性向上・職場環境を健全に保つために必要
部下への態度威圧的・攻撃的責任感を持って向き合う態度があり、知識・スキル・業務姿勢の改善を促す
対象上司の感情で対象が左右される部下の成熟度やモチベーションを考慮し、タイムリーに行われる。
誰の利益か上司と組織のみ部下・上司・組織のいずれにも利益が生まれる
上司の感情怒り・イライラ・冷徹・嫌悪感・嘲笑など前向き・真剣・好意・愛情など
結果雰囲気が悪化・部下が萎縮・退職者増加など部下が指導を受け入れ成長につながる・責任を持った行動や発言ができる・職場に活気が生まれるなど

(※厚生労働省「職場におけるハラスメントの防止のためのパンフレット」より一部引用)

しかし、実際の現場においてパワハラが問題なる際に、上記のような簡単な分類が、そのまま適用できることは、ほとんどないはずです。

また、この表の内容を暗記したからといって、職場でのパワハラ問題が根本的に解決することもないでしょう。

パワハラ問題は、問題が起こったときの場当たり的な方法では対処できません。

上司・管理職の立場の人材の、基本的なコミュニケーションスキルを地道に高めていくことが、解決への一番の近道になります。

コミュニケーションの機会が減る中で信頼関係を構築する必要がある

パワハラ問題を解決するには、上司・管理職のコミュニケーションスキルが重要と述べました。

コミュニケーションを取る目的は様々ですが、パワハラにおいては、普段からの信頼関係の構築が根本的な問題解決につながります。

上司にとって部下が年下の場合、コミュニケーションの主な対象となるのは20代30代の若いビジネスパーソンですが、彼らを取り巻く環境は一昔前と大きく変わっています。

リモートワークの増加、終身雇用の崩壊、価値観の多様化、転職環境の整備、飲みニケーションの減少、など時代の変化と共に、以前ほど「会社というコミュニティ」に依存しない人が増えているのが一つの特徴です。

あるいは上司が「年上の部下」と接する場合、コミュニケーションの対象は中高年層になることが多いと思います。

基本的に人生の先輩として敬意を払い、モチベーションに配慮しつつも役割として必要な依頼や指示をしていかなければなりません。

かつては社内のイベントや、宴会、ランチ、仕事中の雑談など意識しなくとも、強制的に部下・同僚とコミュニケーションを取れた時間も、最近はほとんど、そんな機会がないという方も多いのではないでしょうか。

このようにコミュニケーションの機会自体が減っている中で、信頼関係を構築するためには、より高い精度のコミュニケーションスキルが求められます。

では、どうすればコミュニケーションの機会が減る中で、部下との信頼関係を築くことができるのか?そのポイントを6つ解説していきます。

部下との信頼関係を築く6つのポイント

信頼関係を作る6つのポイント

・部下に関心を持つ
・言葉遣い、態度に気をつける
・肯定的にみる
・相手・状況を観察する
・アンコンシャスバイアスに敏感になる
・感受性を磨く

1、信頼関係の基本は部下に関心をもつことから

パワハラ問題を根本的に予防するためには、部下との信頼関係が不可欠です。
そのためには、まずは相手に関心を持つことが大前提となります。
あなたは、部下の好きな食べ物、趣味、など興味関心を知っていますか?
実際に「知っている」ということが重要なわけではありませんが、相手に関心をもち意識して相手のことを知ろうと心がけることは必要です。
飲み会の機会が無かったり、リモートワークが多くなると、相手への関心が減りやすくなります。その分より意識的に部下に対して、一人の人間として興味をもち、知ろうとする努力を忘れないようにしましょう。

2、言葉遣いや態度に気を付ける

信頼関係ができあがる前段階において言葉遣いは、その人の印象を左右します。
言葉遣い一つで、相手と仲良くなることもあれば、誤解を生む原因となることもあります。自分が何気なく言った言葉を相手がどのように捉えているか?どのような印象を与えているか?相手目線に立つことを再度心がけましょう。

3、人に対する見方を肯定的にする

人間は、自ら意識しない限り、「足りないところ」「欠けているところ」に目がいきがちな習性があります。明らかに優秀だったり、自分と積極的にコミュニーケーションを取ってくれるような、かわいい部下であれば肯定的にみることは難しくないでしょう。
しかし、信頼関係ができておらず心の壁を感じる部下に対して、「ダメ出しはすぐにできるけど、褒めるところがみつからない、、、」ということはないでしょうか。
信頼関係を作るための第一歩は相手を肯定するところから始まります。「彼・彼女の長所・良いところを見つけよう」という意識を大事にしてください。

4、他者や状況をよく観察する

前項の「部下の長所をみつける」ためにも、相手をよく観察することが求められます。
・同僚とどんなコミュニケーションをとっているか?
・どんな手順で仕事をすすめているか?
・キャパはどれくらいか?
・どんな時が楽しそうで、どんな時が辛そうかか?
などなど、相手のことを知るための情報は実はたくさん発信されています。
相手に興味をもつことで、今まで気づかなかった情報がみえることもあるでしょう。
自然と入ってくる情報を待つだけではなく、「見よう」と意識することが大切です。

5、上司自身のアンコンシャスバイアスに敏感になる

「こういうことは常識である」「これくらいことは普通だ」など、上司側が当たり前と思っている基準が、実はアンコンシャスバイアス(無意識の偏ったモノの見方)になっていないか要注意です。
指導する側の前提が、部下の前提と一致するとは限りません。十人十色という言葉があるように人はそれぞれ持っている世界観や価値基準が違います。多様性が重視される時代ですので、この点は非常に重要なポイントになってきます。
指導とは仕事に必要な能力や態度の改善・向上のために行いますが、人と人の関係性においては人格尊重なくして信頼関係は生まれないのです。
上司が自分の前提としていることを自覚し、部下が理解できるように言葉を尽くして説明することで指導内容が伝わりやすくなります。

6、感受性を磨く

コミュニケーションにおける感受性は、「対人感受性」と「状況感受性」をまずは意識することがポイントです。
誤解を恐れずいうなら、「対人感受性」とは、相手の気持ちに敏感になること。「状況感受性」とは、その場の空気を理解することです。
感受性は、一朝一夕で磨かれるものではありません。まずは、意識することが第一歩です。意識しながら見ることで、相手の反応や、状況の見え方が変わってきます。コミュニケーションスキルが高い人は、この感受性が優れています。相手に関心を持ち、観察することで感じる変化や違和感などの情報に敏感になることで結果的に相手と自分の間にある溝を埋める方法が見えてくるようになります。

まとめ

ここまでパワハラや問題解決のためのコミュニケーション、信頼関係構築のポイントについてお伝えしてきました。

上司個人が、普段から部下の話に耳を傾け信頼関係を積極的に構築する姿勢が重要です。

普段から、お互いの信頼関係ができていれば、「適切な指導」を「パワハラ」と捉えられるようことは基本的に起こらないはずです。
指導の際は、感情的な話し方にならないよう、指導する行動や内容の焦点を絞り、どうしたら部下が理解できるかをまずは工夫してください。

また、上司個人だけでなく会社としての取り組みを重要です。ハラスメント防止研修など基本的な知識の習得も大事ですが、経営層や人事部を通して基本的なコミュニケーションを徹底すること啓蒙していくのが問題の防止につながります。

繰り返しになりますが、パワハラ問題の本質は、部下との信頼関係の欠如やコミュニケーション不足が主な原因です。

本記事で解説した内容が、部下との問題を解決する一助になれば幸いです。

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この記事を書いた人

Qざえもんのアバター Qざえもん AWコンサルティングのご意見番

AWコンサルティングのご意見番のお侍。ビジネスマンの悩みを解決するのが生き甲斐。剣術の鍛錬と一緒に、組織開発についての知識や、ビジネスマインドを日々磨いている。

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