管理職を敬遠する社員増加の現状
最近、部下から『管理職になりたくないです』って相談されたよ。自分も若手の頃は同じことを考えてたし、難しい問題だよね。
私の部署でも、課長候補の若手が昇進を断るケースが増えていて困ってたところだわ
昇進したがらない若手が増えているのは日本企業全体で深刻化している課題だね。拙者の時代は、戦で武功をあげて将軍になりたいという人の方が多かったけど今は考え方が変わって来ているようだね。
昨今の日本企業において、管理職のなり手不足が深刻な問題となっています。
厚生労働省「労働経済分析」(2018年): 管理職への昇進を希望しない従業員は 40% を超え、年々増加傾向。
エン・ジャパン株式会社「管理職に関する意識調査」(2023年): 20代社員の 70.2% が「管理職になりたくない」と回答。
若手だけでなく、30代後半から40代前半の中堅社員層でも管理職離れが顕著で、その傾向は年々強まっているのが現状です。
このような状況は、企業の持続的な成長に大きな影響を及ぼす可能性があります。
なぜなら、管理職は組織の要だからです。
戦略の立案・実行から人材育成まで、企業の競争力を左右する重要な役割を担っています。管理職候補となる若手・中堅社員の「管理職離れ」は、単なる人事制度の問題ではなく、企業の未来を左右する経営課題として認識する必要があります。
さらに、近年の働き方改革や価値観の多様化により、従来の日本型雇用システムが大きな転換期を迎えています。終身雇用を前提とした年功序列型の昇進システムは、若手社員の価値観とマッチしなくなってきています。
このような状況に対して、企業はどのように向き合い、対応していくべきなのでしょうか。今回はは、管理職になりたくない社員が増加している背景を詳しく分析するとともに、企業が取るべき具体的な対応策について、実践的な視点から解説していきます。
特に注目すべきは、この問題が単に個人の意識の問題ではなく、企業の人事制度や組織文化、さらには日本の労働市場全体に関わる構造的な課題であるという点です。そのため、解決策を考える際には、個人レベルでの対応だけでなく、組織全体としての包括的なアプローチが必要となります。
社員が管理職になりたくない理由
管理職になりたくない理由って、みんな何て言ってるの?
うちの部署の若手は、責任が重すぎて怖いって言ってるよ
管理職を敬遠する理由には、いくつかの共通したパターンがあるんだ
管理職になりたくない理由として、最も多く挙げられるのが「責任とプレッシャーの重さ」です。部下の育成や評価、業績達成、さらには部署全体のメンタルヘルス管理まで、求められる責任の範囲は年々拡大しています。
特に近年では、ハラスメント対策やメンタルヘルスケアなど、従来にはなかった新たな責任も加わり、その負担はさらに増えています。
次に多いのが「ワークライフバランスの悪化への懸念」です。管理職の多くが恒常的な長時間労働を強いられているというデータもあり、育児や介護との両立に不安を感じる社員が多いのが現状です。特に共働き世帯が増加している現代では、従来のような仕事中心の生活スタイルを望まない社員が増えています。
また、「処遇への不満」も大きな理由の一つとなっています。管理職として求められる責任の重さと比較して、給与や待遇面での上昇が十分でないと感じている社員が多いのです。実際、管理職と一般職の給与差が縮小傾向にある中、責任だけが重くなることへの抵抗感は強まっています。
総じて、いえるのはこれらの問題に苦しんでいる「現職の管理職」が実際に多く、その大変そうな背中を見ている部下たちが同じキャリアを進むことに抵抗感があるのが根本的な原因でもあります。
企業が抱えるリスク
でも、このまま管理職のなり手が減り続けたら、会社はどうなっちゃうの?
うちの部署でも、課長が不在で色々と停滞してるんだよね
そうなんだ。実は企業にとって、これは想像以上に大きなリスクになるんだよ
管理職不足が企業にもたらすリスクは、主に以下の3つの観点から考えることができます。
まず第一に、「組織の機能低下」です。管理職は組織における重要な意思決定者であり、戦略立案から日常業務の調整まで、様々な役割を担っています。管理職不在は即座に意思決定の遅延や組織の非効率化につながり、結果として企業の競争力低下を招きかねません。
第二に、「人材育成の停滞」があります。管理職は若手社員の育成や指導において重要な役割を果たします。管理職不足は、次世代を担う人材の育成機会の損失につながり、中長期的な企業の成長を阻害する要因となります。実際、管理職不在の部署では、若手社員のスキル形成や career 発達が遅れる傾向が指摘されています。
第三に、「組織文化の衰退」というリスクがあります。管理職は組織の価値観や文化を体現し、伝承する重要な役割も担っています。管理職層の希薄化は、企業の理念や価値観の継承を困難にし、組織としての一体感や方向性を失わせる可能性があります。
さらに深刻なのは、これらの問題が負のスパイラルを形成してしまうことです。
管理職不足による組織の機能低下は、残された管理職の負担をさらに増大させ、それが更なる「管理職離れ」を加速させる要因となりかねません。また、優秀な人材ほど管理職を回避する傾向が強まれば、組織全体の活力低下にもつながります。
このように、管理職不足の問題は、単なる人事制度上の課題ではなく、企業の存続に関わる重大なリスクとして認識する必要があります。特に、急速な環境変化に直面している現代において、この問題への適切な対応は、企業の将来を左右する重要な経営課題となっているのです。
管理職になりたくない社員への効果的な対処法
じゃあ、具体的にどんな対策ができるんだろう?
うちの会社でもなにか始めないとまずいよね
そうだね。実は一番大切なのは、今の管理職たちが生き生きと働けるようにすることなんだ。プライベートを犠牲にして仕事の成果にすべてを捧げ、出生街道まっしぐらの典型的な昭和の上司に魅力を感じない若手が増えたということだから、今の時代にあった魅力的な管理職について考える必要があるね。
4-1. 現任管理職の育成強化と昇進後も自分にあった働き方ができる環境を整える
まず優先すべきは、現在の管理職が活き活きと働ける環境を整えることです。
若手社員が管理職を敬遠する大きな理由の一つに、現在の管理職の姿に魅力を感じられないという点があります。
具体的には、管理職たちに不足しているマネジメントスキルを補う研修やサポートを充実させたり、さらには管理職同士が経験やノウハウを共有できるコミュニティの形成などが有効です。
また、プレイングマネージャーとなってしまい、自身の仕事とマネジメント業務両方が中途半端になってしまっている管理職への対策も必要です。
従来の、バリキャリ思考の典型的なできる上司ではなく、若手たちが求める将来像も多様化しています。
管理職、昇進後も自分にあった労働環境を維持できることができることが伝われば、若手たちの悩みも徐々に解消されるはずです。
これにより、「管理職は大変そう」という若手社員の不安を払拭することができます。
4-2. 魅力的なキャリアパス設計
管理職のキャリアパスを明確化し、その魅力を効果的に伝えることが重要です。
具体的には、管理職としての成長機会、裁量権、やりがいなどを可視化し、若手社員が将来のキャリアをイメージしやすい環境を整えます。
また、管理職だけでなく、専門職としてのキャリアパスも同時に整備することで、社員の適性や志向に応じた選択肢を提供することができます。
4-3. 研修・教育制度の充実
管理職に必要なスキルを段階的に習得できる教育プログラムの整備が重要です。
リーダーシップ、コミュニケーション、目標管理など、実践的なマネジメントスキルを体系的に学べる機会を提供します。
また、現役管理職によるメンター制度を導入し、実際の経験に基づいた知識やノウハウの継承を図ることも効果的です。
4-4. ワークライフバランスの支援
管理職のワークライフバランスを実現するための具体的な施策として、業務の効率化、権限委譲の促進、ITツールの活用などが挙げられます。
また、フレックスタイム制やテレワークなど、柔軟な働き方を可能にする制度の整備も重要です。
4-5. コミュニケーションの活性化
管理職と一般社員との間で、キャリアに関する率直な対話ができる機会を定期的に設けることが重要です。
特に、若手社員の不安や懸念を早期に把握し、適切なサポートを提供することで、管理職への心理的なハードルを下げることができます。
また、管理職の日常業務や意思決定プロセスを可視化し、若手社員が管理職の仕事をより身近に感じられるような工夫も効果的です。
各施策を実施する際は、組織の状況や課題に応じて優先順位をつけ、段階的に導入していくことが重要です。
特に、現任管理職の育成と活性化は、他の施策の効果を高める土台となるため、最優先で取り組むべき課題といえます。
管理職を増やすための取り組みに関してはこちらの記事も参考にしてください↓
管理職の意識改革
でも、今の管理職の人たちの意識も変わらないとダメだよね?
そうそう。古い考え方の上司が多いと、若手はますます管理職を避けちゃうよね。
その通りだよ。これからの時代に合った新しい管理職像を作っていく必要があるんだ
従来の管理職像は、強いリーダーシップと権威を持ち、部下を指揮命令することが主な役割でした。しかし、現代では、そのような旧来型の管理職像は、若手社員の価値観とミスマッチを起こしています。これからの管理職に求められるのは、より柔軟で共感的なリーダーシップスタイルです。
具体的には、以下のような意識改革が必要となります:
- コーチング型リーダーシップの実践:部下の自主性を尊重し、成長をサポートする姿勢
- 多様性の受容:異なる価値観や働き方を認め、活かすマネジメント
- 権限委譲の促進:自分ですべてやらず、適切な権限移譲による部下の成長機会の創出
- 対話重視の姿勢:一方的な指示ではなく、双方向のコミュニケーションを重視
このような意識改革を進めることで、若手社員にとって魅力的な管理職像を創出し、「管理職になりたくない」という意識を変えていくことが可能となります。
また、現役の管理職自身が働き方改革を実践することで、組織全体の文化変革にもつながっていきます。
まとめ
なんとなく、これからの管理職の在り方が見えてきたよ
私も若手に管理職の魅力をもっと伝えていきたいな
これは一朝一夕には解決できない課題だけど、長期的な視点で取り組んでいこうね!
管理職になりたくない社員の増加は、日本企業が直面する重要な経営課題です。
しかし、この問題は単なる個人の意識の問題ではなく、組織全体の在り方や、働き方に関する価値観の変化と深く結びついています。
特に重要なのは、現在の管理職が生き生きと働き、若手社員にとって魅力的なロールモデルとなることです。
管理職自身が働きがいを感じ、充実した生活を送れる環境を整備することは、次世代の管理職育成において極めて重要な要素となります。
また、若手社員の価値観の多様化に対応し、従来の画一的な昇進・昇格制度を見直すことも必要です。管理職としてのキャリアパスと、専門職としてのキャリアパスを併設するなど、社員一人ひとりの志向や適性に応じた多様なキャリア選択肢を用意することが求められています。
さらに、組織全体としての対応も重要です。管理職の業務負担を軽減するための業務効率化や、権限委譲の促進、柔軟な働き方を可能にする制度の整備など、組織全体での取り組みが不可欠です。これらの施策は、単に管理職問題の解決だけでなく、組織全体の生産性向上や働き方改革にもつながります。
このような複合的な課題に対しては、組織開発の専門家による支援が効果的です。外部の視点を取り入れることで、組織の課題を客観的に分析し、より効果的な解決策を見出すことができます。
- 現任管理職の育成と活性化による魅力的なロールモデルの創出
- 若手社員の価値観や志向性に合わせた柔軟なキャリアパスの設計
- 管理職を支える組織全体の仕組みづくりと文化のづくり
あなたの会社でも、イキイキと働く魅力的な管理職が増え、問題解決につながることを願っています。
具体的なアドバイスが必要であればいつでもご相談ください。