こんにちは。
AWコンサルティングの渡邉です。
仕事に意欲的で成果も上げているけれど、その分残業時間や休日出勤が多く疲れた顔をしている部下。だいたいどこの部署にもいるものですが、上司としては良くも悪くも、そのまま見過ごすわけにはいきません。
働き方改革も推進されている今、部下の勤怠管理や、チーム内の労働環境を改善していくことは、管理職の仕事の中でも特に重要なものの一つでしょう。
頑張りすぎている部下が過労で倒れてしまっては、会社としても困るうえ、上司である自分のマネジメントに問題があると評価されてしまいます。適度な休息をとって、メンバー全員が常に良いパフォーマンスを発揮するほうが、チームとしての生産性も高いです。
チームの生産性を落とさず、自ら過労の道に走る部下を止めるため、この記事では以下のことを解説します。
• 部下の特徴から見る、仕事を頑張りすぎてしまう理由
• 頑張りすぎる部下に言ってはいけないNGワード
• 部下の労働時間を適正にするために上司ができること
この記事を最後まで読めば、頑張りすぎる部下にどのように接していけばいいかが分かりますので、ぜひ参考にしてみてください。
部下が頑張りすぎる理由
部下はなぜ自分を追い込んで、頑張りすぎてしまうのでしょうか?ここでは、部下の特徴や考え方からみる、頑張りすぎてしまう理由を解説していきます。
期待に応えたいと思いすぎている
上司や周りの期待に応えたいと強く思っている人も、頑張りすぎる傾向にあります。
頑張りすぎる部下は、仕事に意欲を持って取り組み、成果も十分に出している真面目な人が多いです。成果を出して当然と思っているので、「失敗は許されない」と無意識のうちに自分で自分にプレッシャーをかけてしまっている可能性があります。
そのため、成果を出すためにオーバーワークになっていたとしても、周りを頼らず、残業や休日出勤でまかなおうとしてしまうのです。
本来は時間内で生産性をあげる方法を考えていくべきなのですが、期待に応えたい一心で、間違った方向に力を入れてしまう場合があります。
頼まれた仕事を断れない
頼まれた仕事を断れず、頑張りすぎてしまうケースもあります。
人が嫌がる仕事を率先して引き受ける人は、重宝されます。しかし、定時内に終われば「よく働いてくれる良い人」でも、残業や持ち帰りをするほど仕事を抱え込んでしまっているなら、それは「自分のキャパシティを理解できていない人」です。
自分の力量以上の仕事を安請け合いしてしまう人は、自分一人では回らないほどの仕事を抱えても、「自分が頼まれたのだから自分がやらなくては」と思ってしまいます。新たな仕事を断ったり、周囲を頼ったりするのがうまくないため、どんどん仕事に忙殺されていくのです。
頼まれた仕事を断れないタイプの人は、頑張りすぎて、気づかぬうちに心身を壊してしまう危険性も秘めています。
承認欲求が強い
部下が頑張りすぎる理由の一つは、「承認欲求が強い」というパターンがあります。
周りに認められたい、褒めてもらいたいという気持ちが強く、残業や早出・休日出勤などをして「頑張ってますアピール」をするのが癖になることがあるからです。
• 出世欲があり、自分が成績トップになりたい、同期の中で一番に出世したいと思っているタイプ
• 幼いころからあまり周りに認められた経験がないため、仕事でも評価されているか不安で、働いている実感を得ようと無意識に自分を犠牲にしているタイプ
承認欲求が強い人は、上記の2パターンに当てはまることが多いです。
視野が狭い
視野が狭い人も、頑張りすぎてしまう傾向にあります。
視野が狭い人は、上司が労働環境の改善を図っていても、「誰に迷惑をかけるわけじゃないんだからいいだろう」と自己責任を盾にし、変わろうとしません。
ある社員だけが残業ばかり続けている場合、以下のことが起きる可能性があります。
• 他のチームメンバーが帰りづらくチームで不満が起きる
• 「部下の残業や休日出勤が多い」と上司が会社側から注意される
• 万が一部下が過労で倒れ、そのことがSNSなどで広まった場合、企業側が「社員を倒れるまで過労に追い込んだ”ブラック”な会社」とレッテルを張られる
• 残業ばかりしている人が評価されている体制を不満に思い、他の社員が辞めてしまう
• ブラック企業だと噂され、採用活動にも影響が出る
上記のように、社員の過労はさまざまなことに影響を与えます。しかし視野が狭いと、自分がこのまま働きすぎるとどうなるのか、先々のことまで考えられないのです。
忍耐強いのはいいことですが、人の意見を素直に受け入れられないのは本人にも問題あります。視野が狭く融通がきかない人が頑張りすぎると会社に不利益を与えるかもしれないため、注意が必要です。
完璧主義である
完璧主義なゆえに、頑張りすぎてしまう部下もいます。
ささいなことにも手を抜かない完璧主義な人は、自分のやり方に固執しすぎて、周りに仕事を分散できない人が多いです。本来他の人がやるべき仕事を、「自分でやった方が早くて正確だから」と勝手に進めてしまいます。
また、自分が「今日はここまでやる!」と決めたら、定時を過ぎても必ずその日のうちに終わらせないと気が済まない人も要注意です。期限に間に合いそうにない仕事があった場合、上司や他部署にかけあって調整するのではなく、自分一人が残業してなんとかしようとしてしまいます。
仕事をやり遂げようとする姿勢は一見良いように見えますが、社内資料作りにたくさん時間を割いているなど、よくよく見返すとムダなことをしている場合も。
会社は、各社員がそれぞれ役割を持って分業で成り立っているものです。一人の人が仕事を抱え込みすぎると、他の人の成長機会を奪ってしまったり、万が一過労で倒れたとき、チーム内に業務が共有されておらず、カバーが難しくなったりします。
過度な完璧主義は、チームの生産性を落としてしまうでしょう。
部下が頑張りすぎているときに言ってはいけないNGワード3つ
部下が頑張りすぎているときに、どのような言葉をかければいいのかは難しいですよね。間違った言葉選びをしてしまうと、部下をさらに追い込んでしまう可能性もあります。
ここでは、頑張りすぎている部下にかけてはいけないNGワードを3つご紹介します。
NGワード1.「頑張って」
部下がそんなに頑張りたいならまぁいいかという安易な気持ちで、「その調子で頑張って」と応援の言葉をかけるのは危険です。上司から頑張るように言われた部下は、「期待してもらっているからもっと頑張らなきゃ」「頑張ってと言われるということはまだまだ努力不足な証拠だ」などと思ってしまいます。部下を追い込んでさらなる過労を引き起こすため、言わないようにしましょう。
また、「頑張って」は相手にだけ頑張ることを強いる、他人事に聞こえることもあるワードです。一丸となって仕事をしていく自分の部下やチームメンバーに使うには、あまりよくない言葉かもしれません。
NGワード2.「頑張らなくていい」
頑張りすぎる部下に対して、「お前は頑張りすぎだ」「無理しすぎだ」と否定的な言葉をかけてしまうのも良くないです。
過労気味の部下は、自分が頑張っていると自覚していないことが多く、周囲に頑張りすぎだと言われても「全然そんなことないです」と否定してしまいます。あるいは、上司から自分の頑張りを否定された場合、「こんなに頑張っているのに怒られた…」と落ち込む部下もいるでしょう。自分の仕事の仕方まで否定されたように受け取ってしまうからです。
頑張りすぎる部下は、働きすぎ・普通・手抜きのボーダーラインがよく分かっていません。「頑張らなくていい」と言われてもどうすれば…と困惑してしまうため、上司がかける言葉としてはあまり良くないでしょう。
NGワード3.「期待しているよ」
精力的に仕事をする部下をみて、その頑張りを認めようとして「期待しているよ」と声をかけるのは逆効果です。より高い成果を出してほしくて声をかける気持ちはわかりますが、それでは部下が期待に応えるために、もっと頑張ってしまう可能性があります。
上司からすれば、部下が頑張るのは本来良いことですが、プレッシャーを感じて過労までいってしまうと返って生産性が落ちかねません。部下をさらに追い込んでしまうため、頑張りすぎている部下に「期待しているよ」と伝えるのはやめましょう。
部下が頑張りすぎだと感じたときに上司ができる3つのこと
部下を過労で潰さないためには、生産性を落とさずに残業を減らすことが重要です。ここでは、部下が頑張りすぎだと感じた時に上司ができることを3つ解説します。
1.頑張っていることを認める
まずは結果がどうであれ、部下が仕事に精一杯取り組んでいることを認めてあげましょう。頑張りすぎていることや残業が多いことを言及して部下を否定してしまうのは良くありません。本人のやる気が削がれるだけでなく、「こんなに頑張っているのに認めてもらえない」と上司を信頼してくれなくなる可能性があります。
頑張りすぎている部下に対しては、意欲を認めつつ、下記の手順で仕事量を調整してあげましょう。
- 「よく頑張っているね」と、まずは自分が部下の頑張りを見ていることを伝える
- 今どんな仕事を抱えているのか、ヒアリングする
- 「君にはこの仕事に集中してほしい」と、あくまでよりよい成果をあげるためだと説明し、他の人にも仕事を割り振る
頑張りすぎる部下は、「自分が頑張らなくては」「みんなも忙しいのだから誰にも頼っちゃいけない」と自分を追い込みがちです。上司である自分から頼ってもいい相手がいることを教えられれば、周囲にも仕事を頼みやすくなるでしょう。やんわりとした「業務命令」は断りづらいからです。
頑張っている部下に対しては、とにかく自分は味方であること、助けたい気持ちがあることを言動で示す必要があります。コミュニケーションを積極的に取り、頑張りを認めたうえでサポートすることを考えましょう。
2.残業に対する意識を変える
部下を過労させないためには、部下自身の残業に対する意識を変える必要があります。
働きすぎる部下は、「成果を出していればいくらでも残業していい」と思っていることも多いので、そうではなく時間内での生産性が大事だと理解させましょう。
• 現在の仕事をリストアップして、どの業務にどれくらいの時間がかかっているのか可視化する
• まとめて効率よく行える仕事はないか、やらなくてはいいムダなことまでやっていないかを上司と部下で一緒に確認していく
• やりとりは勤務時間内だけにして、時間外に部下から連絡がきても返さないようにする
上記のことを徹底して、「ただ長時間働いても評価されないのだ」と部下を納得させると良いです。
また、残業に対する部下の意識改革を行う際は、会社全体での協力も重要になってきます。
課長の自分が部下の残業時間を減らそうとしているのに、たまたま立ち寄った社長が「遅くまで頑張っているな」と褒めてしまったら、部下は「褒められた=良いこと」だと認識してしまいます。残業を減らそうと思わなくなるか、今以上に頑張ってしまうため、上層部の意識が食い違わないようにしておくことが大切です。
部下が頑張りすぎだと感じるのであれば、上長会議などで相談し、会社全体で労働環境の改善に取り組みましょう。
3.より高い視点を与える
部下の頑張りすぎを抑えるには、今より高い視点を与えることも効果的です。
頑張りすぎている部下は、承認欲求が強く、出世も意識していることがほとんど。いずれ上の立場になることを見据えて、今の働き方では将来どのようになるかを伝えましょう。
今はプレイヤーで頑張れば頑張っただけ評価してもらえる環境でも、部下を持つようになれば上司が積極的に残業するわけにはいきません。ワークライフバランスを重視している若手が多いからです。
一人で仕事を抱え込まずに、チーム全体の生産性をあげていくことの重要性や、仕事とプライベートの両立がよりよいパフォーマンスを生むことなどを、上司が率先して伝えましょう。
「もし自分が経営者だったら」という視点で、社員が過労することの影響を考えさせてみるのも効果的ですよ。
部下が頑張りすぎていたら、チームで見守りつつ改善を目指そう
ここまで、以下のことを解説してきました。
• 部下が頑張りすぎてしまう理由
• 頑張りすぎている部下に言ってはいけないNGワード
• 部下が頑張りすぎているときに上司ができること
頑張りすぎている部下には、まず相手を肯定し、上司である自分は味方だと寄り添って上げることが大切です。労働環境の改善も自分一人の力では難しいため、チーム全体で、残業時間を減らして生産性を上げる方法を模索していく必要があります。
頑張りすぎてしまっている部下を見つけたら、過労で潰れてしまう前に、周りが手を差し伸べてあげてくださいね。