組織の心理的安全性を高める巻き込み方 〜効果的なチーム作りのための6つのポイント〜

目次

はじめに〜心理的安全性とは?巻き込み力との関係〜

最近、部署の生産性が上がらなくて…みんなバラバラに仕事をしているような気がするんだ。

裕子

私も同じ悩みだわ。せっかくのチームなのに、お互いの強みを活かせていない気がして。

Qざえもん

なるほど。戦でも各部隊がバラバラに動いていて、なかなか力を結集できなくて悩んでいる武将は多かったよ。部下たちの力を結集するために部下たちが安心して意見を言える『参加型の作戦会議』を取り入れているところもあったよ。

チームの生産性を高め、イノベーションを促進する。そんな理想的な職場づくりにおいて、近年特に注目を集めているのが「心理的安全性」という考え方です。この概念は、グーグルが行った生産性の高いチームの研究「Project Aristotle」で広く知られるようになりましたが、実は1990年代にハーバード大学のエイミーC・エドモンドソン教授が提唱した理論です。

心理的安全性とは、「チームの中で、自分の考えや意見を自由に発言しても、非難されたり、否定されたりすることはない」と信じられる状態のことを指します。つまり、メンバー一人ひとりが安心して意見を述べ、失敗を恐れずにチャレンジできる環境のことです。

心理的安全性は、単にチーム内で自由に発言できる環境というだけではありません。それは、メンバー同士が積極的に協力し合い、お互いの力を引き出し合える「巻き込み力」を育む土台となるものです。

心理的安全性が低いチームでは、次のような状況が見られます。

  • メンバーが自分の意見を言えず、周りの協力を求めることもためらってしまう
  • 新しいアイデアがあっても、否定されることを恐れて黙ってしまう
  • 困っているときでも、助けを求められない

心理的安全性が高まると、自然とメンバー同士が協力し合える環境が生まれます。例えば、困ったときに気軽に助けを求められる、新しいアイデアを共有しやすい、そして何より、お互いの強みを活かし合えるチームへと成長していきます。この「巻き込み力」と「心理的安全性」は、まさに車の両輪のような関係にあるのです。

なるほど。心理的安全性を高めることで、自然と部下同士が協力し合えるようになるんですね

裕子

でも、具体的にどうやって高めていけばいいのかな…

Qざえもん

その答えは、これから一緒に見ていこう。大切なのは、リーダーである君たちが最初の一歩を踏み出すこと。その勇気が、必ずチームを変えていく原動力になるはずだよ

このような心理的安全性と巻き込み力の相乗効果を高めていくために、具体的な6つのポイントを見ていきましょう。それぞれのポイントは、すぐに実践できる具体的なアクションとして紹介していきます。

心理的安全性を生むPoint1.積極的な傾聴で「安心感」を育む

部下を巻き込もうと思うんですが、どこから始めればいいのかわからなくて…

裕子

私も同じ。アイデアを出してって言っても、なかなか反応がないんだよね。

Qざえもん

まずはメンバーの意見や気持ちを本当の意味で、『聴く』ことが大事だよ。この聴くことを怠って、部下のクーデーターにあった大名や将軍は本当に昔から多いんだ。

相手を巻き込むための第一歩は、実は「聴く」ことから始まります。なぜなら、相手の考えや状況を理解していなければ、効果的な巻き込み方がわからないからです。また、じっくりと話を聴いてもらえる経験は、相手との信頼関係を築く土台にもなります。

具体的な傾聴スキルとして特に効果的なのが、WH質問(What、Why、How、When、Where、Who)を使ったオープンクエスチョンです。

例えば、

  • 「その案について、具体的にどんなことを考えているの?」(What)
  • 「なぜそう考えるようになったの?」(Why)
  • 「どうやって進めていきたいと思っているの?」(How)

なるほど。話を聴くときは、質問の種類も意識するといいんだね。

裕子

私も、もっと相手の考えを引き出せるような質問を心がけてみます!

Qざえもん

そうだね。そして、聴いた内容をもとに適切な巻き込みができると、チーム全体の力が大きく育っていくんだ。例えば、Aさんが抱えている課題に、Bさんの経験が活きそうだと気づいたら、BさんにAさんのフォローやヘルプをお願いする。そんな橋渡しもできるようになるはずだよ。

このように、積極的な傾聴は、単なるコミュニケーションスキルではありません。

それは、チームの中で適切な巻き込みを実現し、メンバー同士の協力を促進する重要なツールなのです。

日々の小さな実践を通じて、少しずつでも意識的に取り入れていきましょう。

心理的安全性を生むPoint2.共感力を磨いて「信頼関係」を築く

先ほどの傾聴の話から、相手の気持ちを理解することの大切さには気づいたよ。でも、なかなか上手くいかなくて…

裕子

私も相手の立場で考えようとはするだけど、時々、自分の価値観で判断してしまいそうになるな。

Qざえもん

最初は難しいよね。でも、メンバーの苦労や喜びに共感することで、次第に信頼関係が築けるよ。

共感とは、相手の感情や経験を理解し、その人の立場に立って考えることです。

チーム内で共感力を高めることは、効果的な巻き込みの鍵となります。

特に重要なのが「自分ごと化」という考え方です。これは、相手の課題を「他人事」ではなく「自分事」として捉える姿勢のことです。

例えば、部下が困っている状況に遭遇したとき、「自分だったらどう感じるだろう?」「どんな支援があれば助かるだろう?」と考えてみましょう。

共感力を高めるための具体的な方法として、「シェアリングサークル」がおすすめです。

具体的には以下のような流れで進めます。

  • チームメンバーが輪になって座り、各自が最近直面している課題や成功体験を共有する
  • 他のメンバーは、その経験に対して自分ならどう感じるか、どのようなサポートができそうかを伝える
  • 最後に、お互いの気づきや学びを共有する

特に課題や悩みに関しては、メンバーが安心して話せるために、リーダーや年次の高いメンバーから積極的に自分の失敗や悩みを共有するようにしましょう。

なるほど。相手の立場に立って考えることで、より適切なサポートができるようになるんだね。

裕子

私も、部下の話を聞くときは、もっと『自分ごと化』を意識してみようと思います!

Qざえもん

共感力を磨くことは、一朝一夕にはいかないかもしれない。でも、相手の気持ちに寄り添おうとする姿勢そのものが、すでに信頼関係の第一歩となるんだ。

このように、共感力を高めることは、チーム内の信頼関係を築き、自然な形で相互協力が生まれる環境づくりにつながります。日々の小さな気づきと実践を通じて、徐々に成長していきましょう。

心理的安全性を生むPoint3. 承認と感謝で「自己肯定感」を高める

最近、部下の一人が小さな成功を収めたんです。でも、どう褒めていいのか、ちょっと迷ってしまって。

Qざえもん

『褒めて育てる』という考えは昔からあったよ。部下の小さな進歩も見逃さず、しっかりと認めることで、自然と皆が切磋琢磨する組織を作り上げていくことができるよ。

承認とは、単なる褒め言葉ではありません。

相手の存在や貢献を認め、それを言葉にして伝えることです。

承認された経験は、人を大きく成長させる力を持っています。

特に、自分の価値を認められた人は、より積極的に他者と関わり、協力し合える関係を築けるようになります。

効果的な承認の方法として、次の「3つの具体化」を意識してみましょう。

  • 行動の具体化:「この資料、データの分析が詳しくて、とても分かりやすいね」
  • 影響の具体化:「あなたの提案のおかげで、クライアントからの評価が上がったよ」
  • 期待の具体化:「これからもその細やかな気配りで、チームを支えてほしいな」

さらに、チーム全体で感謝の気持ちを共有することも重要です。例えば、週次ミーティングの最後に「今週、誰のどんな行動に助けられたか」を共有する時間を設けてみましょう。

このような習慣は、チームメンバー同士の相互理解と協力を促進します。

適切な承認と感謝の共有は、個人の自己肯定感を高めるだけでなく、チーム全体の巻き込み力も向上させます。

決して大げさな表現は必要ありません。

日々の小さな気づきを、具体的な言葉にして伝えていくことから始めてみましょう。

心理的安全性を生むPoint4. 建設的なフィードバックで「成長」を促す

フィードバックって、どうしても指摘されることばかりが目立ってしまいそうで…

裕子

私も同感。せっかくのフィードバックが、相手のやる気を下げてしまわないか心配で

フィードバックの本質は、相手の成長を支援することです。適切なフィードバックを通じて、メンバー同士が学び合える関係性を築くことができます。

特に重要なのは、フィードバックを「一方通行の指摘」ではなく、「双方向の対話」として捉えることです。

一方が「教える側」、もう一方が「教わる側」という固定的な関係ではなく、お互いが学び合い、高め合える関係を築くことが重要です。

効果的なフィードバックには、次の3つのポイントがあります:

  • まず良い点を具体的に伝える
  • 改善点は「どうすれば良くなるか」という視点で提案する
  • フィードバック後に、必ず相手の考えや思いを聞く時間を設ける
  • 「これについて、あなたはどう考える?」と、相手の視点を積極的に引き出す
  • 自分の解釈が正しいか、相手に確認する習慣をつける

建設的なフィードバックは、自然な形で相手を巻き込むきっかけにもなります。

実際の対話例を見てみましょう。

マネージャー:先日のプレゼン、データの分析が詳しくて説得力がありましたね。ただ、もう少しストーリー性があると、より伝わりやすいかもしれません。
メンバー:ありがとうございます。確かにその点は私も気になっていて…具体的にどんな工夫ができそうでしょうか?
マネージャー:そうですね…例えば、どんな課題意識からこの分析を始めたのか、冒頭で共有するのはどうでしょう?
メンバー:なるほど!実は、こんな背景があって…

なるほど。フィードバックは、お互いの気づきを共有する対話の場なんだね。

裕子

相手の意見を聞くことで、自分自身も新しい視点を得られそう。

Qざえもん

そうそう!フィードバックは、決して上から目線の指導ではないんだ。お互いの経験と知恵を分かち合い、共に成長するための対話なんだよ。明日から、ぜひ実践してみてほしい。

このように、双方向のフィードバックは、チーム全体の学びと成長を促進します。一人ひとりが「教える側」であり「学ぶ側」でもある。そんな関係性を築くことで、自然な形での協力と巻き込みが実現できるのです。

心理的安全性を生むPoint5. 失敗を恐れずに挑戦できる「環境」を作る

裕子

部下に『失敗を恐れずチャレンジしよう』と言っても、なかなか響かなくて…

Qざえもん

まずは上司である君たちが、自分の失敗を正直に語ることから始まるんだよ。

心理的安全性を高める最も効果的な方法は、チームのリーダーや経験豊富なメンバーが、自身の失敗体験を率直に共有することです。なぜなら、「このチームでは、失敗を隠す必要がない」というメッセージを、言葉ではなく行動で示せるからです。

具体的な取り組みとして、ミーティングの際以下のような順で自分の失敗を共有してみましょう。

  • まず、マネージャーや先輩社員が自分の失敗体験を具体的に共有する
  • その失敗から何を学び、どう成長したのかを率直に語る
  • その後で、他のメンバーにも共有を促す
裕子

確かに…私自身、失敗したことを隠そうとしていた部分があったかもしれません。

僕も反省。もっと自分の経験を、良いことも悪いことも含めて共有していこうと思います。

Qざえもん

その気づきが大切!例えば、次のような声かけから始めてみるのはどうかな。

  • 『実は私も先週、このような失敗をしてね…』
  • 『私の経験から言うと、こんな失敗から学んだことが…』
  • 『私も最初は上手くいかなかったんだ。でも、そこからこんなことに気づいて…』」

このように、まずはリーダーが自分の弱みや失敗を見せることで、チーム全体に「失敗しても大丈夫」というメッセージを伝えることができます。そうすることで、メンバーも徐々に自分の経験を共有しやすくなり、お互いにサポートし合える関係性が自然と築かれていきます。

失敗を共有する際の具体的なポイントとしては、

  • 具体的な状況と、その時の感情も含めて話す
  • 失敗から得られた学びを、前向きな形で伝える
  • 必要に応じて、その失敗をどうやって乗り越えたのかも共有する
裕子

なるほど。明日のチームミーティングで、私の失敗談を共有してみるね!

Qざえもん

素晴らしい決断だね!君たちの勇気ある一歩が、必ずチームを変えていく原動力になるはずだよ!

このように、失敗を恐れない文化は、リーダーの率先した行動から始まります。それは時に勇気のいることかもしれません。

しかし、その誠実な姿勢こそが、真の意味での心理的安全性を築く礎となるのです。

心理的安全性を生むPoint6. 多様性を尊重し「包容力」のあるチームに

自分と違う世代とのコミュニケーションって難しいよね。

裕子

私も世代で括って考えていたけど、実は一人ひとり全然違うんだよね。どう向き合えばいいのか..

Qざえもん

多様性という言葉を耳にするようになったのは最近だけど、『個を活かしながら、全体としての調和を保つ』のが組織づくりの本質だということはずっと昔から言われていたことだね。

多様性の本質は、世代や属性による分類ではなく、一人ひとりがかけがえのない個性を持っているという点にあります。

まず大切なのは、「個」としてのメンバーを深く理解することです。

その上で、チーム全体としての方向性を見出していく。この両方のバランスが重要になります。

多様性のあるチームをまとめる際の最終的な要は、「顧客への価値提供」という基準です。

個々の価値観や働き方の違いは尊重しながら、「誰のために、何を実現するのか」という点で方向性を合わせることが重要です。

代表的な実践例としては下記です。

  • チームの目的を顧客視点で定義する
  • 「売上を上げる」ではなく「お客様の課題をどう解決するか」
  • 「効率を上げる」ではなく「お客様により良いサービスを届けるには」 という観点で対話を行う

なるほど。顧客価値を軸にすると、多様な意見も自然と収束しやすそうだね!

Qざえもん

例えば、ある小売店では、接客スタイルは個人の個性に任せつつ、『お客様が心地よく買い物できる』という基準で判断するようにしたんだ。結果、多様なアプローチが互いを補完し合う形になったんだよ

個々の違いを活かしながらチームをまとめる具体的なステップ

顧客価値を全員が腑に落ちる形で明確にする

  • チーム全員で「私たちはお客様に何を提供できるのか」を話し合う
  • 具体的な顧客の声や事例を共有する

多様なアプローチを認める

  • 同じ目的に向かう異なる方法を認め合う
    例:「丁寧な対面説明」と「効率的なオンライン対応」
  • それぞれの方法が、どう顧客価値につながるかを共有

相互補完を促す

  • 異なるスタイルのメンバー同士でペアを組む
  • お互いの良さを学び合う機会を作る
裕子

個人の違いを活かしながら、顧客価値という共通点で結びつけるということね。

Qざえもん

そう!同じ『お客様満足』でも、それぞれのアプローチが、最終的には顧客への価値として結実する。それがチームの強みになるんだ。

多様性の尊重と組織としての一体感は、決して相反するものではありません。

顧客価値という明確な基準を持つことで、異なる個性や方法論が、むしろチームの総合力として発揮されるのです。

明日のミーティングで、まず『私たちは誰のために、何を提供するチームなのか』について、メンバーと話し合ってみるよ

まとめ〜心理的安全性と巻き込み力の相乗効果を最大化しよう〜

色々なポイントを学んできたけど、どこから始めればいいかな?

Qざえもん

一度にすべてを完璧にする必要はないんだ。小さな実践の積み重ねが、必ず大きな変化を生み出していくんだよ!

ここまで見てきた6つのポイント、「積極的な傾聴」「共感力」「承認と感謝」「建設的なフィードバック」「挑戦できる環境」「多様性の尊重」は、それぞれが独立したスキルではありません。むしろ、これらが相互に関連し合い、補完し合うことで、自然と協力し合えるチームが作られていきます。

例えば、積極的な傾聴があってこそ、真の共感が生まれ、適切な承認やフィードバックが可能になります。そして、それらの実践を通じて、チームメンバーは少しずつ安心感を得て、新しいことにチャレンジできるようになっていきます。

心理的安全性と巻き込み力の向上は、一朝一夕には実現しません。

大切なのは、完璧を求めすぎず、できることから一つずつ実践していく姿勢です。

裕子

一つずつ、地道に取り組んでいけばいいんだね!

Qざえもん

その意気込みこそが、大切な第一歩だよ。ここまでこの記事を読んでくださった皆さん、本当にありがとう。皆さんのチームが、より良い方向に変化していくことを心から願っています!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次