金融業界S社 取り組み事例
金融業界の逆境の中、社内外の垣根を越える巻き込み力を武器に、業務改革とデジタル化を加速させ、組織全体の収益性向上と持続可能な成長を実現。
取り組みの背景
「社内のほとんどの取り組みが部門の枠を出ずに頓挫。自部門だけでなく、組織や職場の垣根を越えて顧客・外部取引先・他組織や他職場を巻き込み、成果を獲得する能力が必要とされていた」
・長期に渡る低金利政策の影響により、金融業界全体でかつてと比較して収益性が低下が問題となっていました。
・この対策のためS社は金融機関としてより積極的な事業活動を模索せざるを得ない状況です。
・その一環で、融資先向け経営指導の積極的展開、金融商品の提案推進、社内の業務改革やデジタル化の推進など、経営効率を高める諸施策が展開されていました。
・しかしほとんどの取り組みが、自部門の枠を超えることができず途中で頓挫したり、明確な効果が得られないまま有耶無耶になってしまう状況でした。
・そこで業務遂行力やマネジメント力はもとより、組織や職場の垣根を越えて顧客・外部取引先・他組織や他職場を巻き込み、成果を獲得する能力が必要とされていました。
問題意識
「リスクを避け、保守的な姿勢で、慎重に仕事しがちな人が多かった」
・組織や職場で打ち出されている重点課題の中には巻き込み不足で停滞したり、成果が不十分な状態が多くみられました
・多くの社員はオペレーショナルな定型業務に慣れ、セクショナリズム(部門間の連携がない)を前提とした思考傾向やワークスタイルに固定化しやすかったからです。
・分かりやすく言い換えると、リスクを避け、保守的な姿勢で、慎重に仕事しがちな人が多いという問題がありました。
・そんな状況を打破するため、人事制度の変更が行われ、コンピテンシー項目の中に「巻き込み力」が明記されたたこともあり、
・この能力を確実に向上するためには、知的な学習で終わるのではなく、より実践的なスキル獲得が期待され、実課題を取り扱って個別のリアルなタスクに対する計画とレビューを通じて、認識と行動を変えられるプログラムが望まれていた
実施内容
「各個人に周囲を巻き込まないと実現できない改革案を設定してもらい、その改革案を実際にすすめながら巻き込み力を獲得していく超実践形式のプログラム」
・プログラムを通じて実際に、他部門や上司などを巻き込まないと実現できない自組織の改革案を考え、行動に移して、効果検証する流れで展開しました。
・講義やケーススタディーなど頭で理解するだけでなく、参加者には実際の業務内で実践を行い、それが自分だけでなく、上司同僚、部署、そして会社全体に影響することを実感して頂きます。
・全体的な流れは以下の通りです。
事前課題1
-成功体験・失敗体験の棚卸
事前課題2
-自分自身で完結できる業務ではなく、周囲(上司・同僚・部下、他部門のメンバー)を巻き込まないと達成できない変革課題を記述
<Day1>
・オリエンテーション・研修の目的
・講師紹介・受講生自己紹介
・「巻き込み力」の概念の理解
・巻き込むリーダーシップ
・巻き込み力ケーススタディ
・ステークホルダーマネジメント
<Day2>
・コンフリクトへの対応
・交渉/認知/感情への対処
・組織を巻き込み動かす影響力
・組織と人を動かすプレゼンテーション
・まとめ
自身で決めた変革課題を、具体的なプロジェクト計画書にまとめ実践に入る準備
・実践の振り返り
・相互フィードバック
・講師からのフィードバック
・今後の進め方についてフォローアップ
・最終発表会
-実践テーマの発表
-実践しての成果・今後の課題について
-講師・受講生からのフィードバック
・これからの実務に生かすための振り返り
・まとめ
効果:巻き込み力の強化により、他部門や社外の利害関係を俯瞰・調整する成功体験を多くの従業員が獲得。
営業部門:施策の展開が明確にスムーズに進むように
・戦略に関する取組課題が総じて順調に進捗して、販売パートナー企業の自分事化が進展した。また、波及効果として、拠点内の横連携強化や部下の成長などが見られた
・ステークホルダーの把握とあわせて、各ステークスファルダーとのコミュニケーション方法についても意識できたので支店の目的をスムーズに各所と共有することができた
・全体工程についてフェーズごとに明記することで、いつ・どこで・何をするべきか計画になりPDCA管理がしっかり行えた。
・臨機応変に意思決定ならびに行動を行うことができている。
・担当エリア内の会議体(各委員会、部課長会議、リーダー会議等)をうまく活用し、タスク管理に基づく施策の展開ができた
新規事業部門:不確実性への対応力が強化され、新商材の開発が躍進
・見通しが立たなかった新商材の市場可能性について、方向性が見えてきた
・計画通り進まない中で、状況に応じてうまく軌道修正することができ、リリースのリスケの判断をするとともに、抜本的な対応を図れた
DX化推進部門:なかなか進まなかったDX化が現場を巻き込むことで一気に進展
・システム導入から低調だった利用件数が向上した
・予実ダッシュボード作成PJをテーマに参加し、既存システムを所与とした運用フローを、データ目線で再構築した。その結果、データ加工作業の迅速化を実現(現行20分⇒見込5分)、システム制約であったデータ確定タイミングの早期化を実現、運用フローの見直しを通じて予算策定作業の抜本見直しも検討を行ってユーザー部門の業務効率化を実現、などの効果が確認できた
・当対応にあたって実施したツールの開発におけるトラブルに対し、課題を整理、その後の対応に結び付けることができたこと。
業務サポート部門:他部門との連携がスムーズになったことで、全社的なプロジェクトをスムーズに完遂。次年度以降の計画も余裕をもって行えるように。
・BCP対応高度化に向けて、これまで部内完結で行ってきた取組だったが、本プログラムを通じて事業部門との連携強化に成功した
・主要関係部門と連携のうえ、円滑な運営が実現した。いかにうまく連携して取り組めるかが最大のポイントだったが、本件の方向性やゴールイメージを共有したキックオフMTGを皮切りに、以降も円滑に調整・連携が図られ、訓練も大きな混乱なく終了。すでに次年度以降のテーマについても話題に上がっており、関係者間で前向きな議論ができている
参加者の声
【部長A氏】潜在的なものも含めて的確に課題に対してのアドバイス、解決策を提示していただき、個人的には大きな気づきや発見があった
【部長B氏】個別のサポートも充実しており、現場に踏み込んだ内容を非常に丁寧にアドバイスして頂いた
【部長C氏】全体研修だけでなく、グループコーチングを通じて個々の職員の事情に寄り添った的確なアドバイスを講師・グループ内でフィードバックいただけることがありがたかったです
【課長D氏】自分の悩みを講師に相談することで自分の頭の整理ができるとともに、同じ受講生や講師からより巻き込み力を高めるためのフィードバックをもらうことができ、新たな気づきにつながった
【課長E氏】同じ受講生同士でフィードバックするための様式提供と時間確保をいただくことで、他受講生の取組みや相談に対してもより理解を深めることができた。今回学んだ気づきを活かして業務に取り組んでいきたい
【課長F氏】第三者的な視点で質問・指摘・助言を受けることで、新しい視点で業務課題の進め方を検討できることが非常に刺激になります
【リーダーG氏】ケーススタディではなく、実際の業務課題を題材とした研修であり、壁打ちの中で具体的なアクションについてご示唆を頂けたため、非常に実践的で有用であると感じた。また、異なる本部に所属する受講者との意見交換を通じて自分とは違った視点を学ぶことができ、非常に参考になった
【リーダーG氏】グループコーチングでいただいた指摘を踏まえて、自分なりに試行錯誤したうえで準備して臨んだ。講師から、自分のアウトプットについて改善しているとの評価を得られて良かった。講師のアドバイスが大変参考になる
【リーダーH氏】受講者の案件がどんどん具体化してきて、どのようなときにどの巻き込みパターンを使うのがよいのかというのが実践で見えてきて、勉強になった